2009/09/04
オーケストラってのは、人数の多い少ないはあっても、よほど変則的でない限り1団の奏者が、指揮者を見て演奏します。
でも、そのオーケストラを3つ使って、指揮者も3人用意して、しかもコの字型にオーケストラを外向きに配置という何から何まで変則もいいところな演奏を聴いてきました。
でも、結論から言うとすばらしかった!
行ってきたのはサントリーホール。
サントリー音楽財団創設40周年記念 サマーフェスティバル2009
特別演奏会<グルッペン>
(ちなみに2009年9月からは公益財団法人サントリー芸術財団に改称したそうだ。)
カールハインツ・シュトックハウゼンという作曲家によるグルッペン(Groupのドイツ語複数形)というこの曲。冒頭に書いたとおり、オーケストラ3つが用意されます。
当然ですが、オーケストラ3つを配置することまで想定して作られたホールなんてあるわけありません。サントリーホールも然り。ですので、客席を大幅に潰して台を作るというムチャクチャをやっています。どういう状態だったかはこちらのサイトに座席図とかがあります。
そして、こういったコンサートでは珍しく全席自由。同じ曲を2回演奏し、その間の休憩時間にそれまでと違う席に移動して、場所による違いも体験するという趣向でした。
どうやら開場と同時に中心部の席を目指してかなりの人がダッシュしたらしいのですが、開場15分後に着いた私は当然その席には座れず。最初は2階席後ろの方、C席で聞いていました。
その席からだと3つのオーケストラを俯瞰することができ、3人の指揮者がそれぞれコンタクトを取りながら演奏している様子がよく分かります。
しかし、音という観点からいくと、3つとも前の方にあることは変わらず、正面の第2オーケストラに至っては反対方向を向いています。ということで、遠くの方で何かいろいろ音が鳴っているなぁ…と、正直つまんなかったです。
そこで休憩時間は1階中央のオーケストラに囲まれた場所に向かって突撃。(多分)良さそうな席に陣取りました。
演奏前に指揮者が解説していた内容や、パンフレットに載っていたシュトックハウゼンが初演したときのリハーサルの写真を見る限り、やはり想定されているのはこの中央のはず…という読み。
果たして、
やはり3オーケストラに囲まれた部分は一つの正解のようです(第2オーケストラの向かい側、つまりP席も実は良かったという話もありました)。
ただ、グルッペンという曲、通常の音楽のようにメロディーが流れるのでなく、何というかいろんな音があっちこっちでぽんぽこ鳴ります。ついついそれに合わせて目や意識が音の方へ向いてしまうのですが、「もしかしてそうやって拾うからバラバラな音なんじゃないか?」と思い目をつぶってみたら別世界。
それまで一つ一つ単独で鳴っていた音が、前から左へ、後ろを通って右へ、そしてまた前へと自分の周囲をびゅんびゅん飛び回るんです。
映画館や電気屋の5.1chサラウンド体験などで音が縦横無尽に動き回るのを、生音で120人スケールで作っているようなもんです。すごい迫力。
生音だからこその臨場感もありますし、オーケストラは当然横の広がりもありますので実質的に自分の周囲はほぼ全て楽器に囲まれている状態、言うなれば120chサラウンド。
NHKが研究目的で96ch収録してましたが、果たして再現はできるのでしょうか…。
「指揮者の楽器はオーケストラそのものだ」というのをどっかで聞いたような気がしますが、今回の演奏がまさにそう。3人の指揮者がそれぞれ息を合わせながら自分たちの「楽器」を演奏し、場を作るという感じ。
「次はないかもしれない」というこのグルッペンの演奏、とてもいい経験をしました。
ちなみにこの曲、作曲者のシュトックハウゼンがやたら細かい注意書きをスコア(楽譜)の最初に書いているそうです。
●演奏場所は倉庫や格納庫などが良い
●練習はここら辺のパートを重視せよ
●リハーサルの際は、ここの入り方を特に練習せよ
●指揮者だけでの練習を、少なくとも3回せよ
●etc....etc....
いつまで経っても文章ばっかりの楽譜ってのもまたすごい話だ…
さらにちなみに、グルッペンの陰に隠れてしまっていますが、グルッペンの前にジェルジ・リゲティという作曲家の12人の女声とオーケストラのための「時計と雲」という曲も演奏されました。これもバイオリン(ビオラ?)の音と女声の音がシンクロしていつの間にか入れ替わっていたり、そもそも12人の女声がほとんどかけ声か鳥が短く鳴くような発声をして呼応していくという不思議な曲でした。
さらにさらにおまけ。
このシュトックハウゼンという人、3群のオーケストラのための「グルッペン」で飽きたらず、4群のオーケストラと4群の合唱のための「カレ」という曲も作ってるぽいです…。
>>ひろっちさん
指揮者が複数いたりするケースは、あるにはあるそうです。
ただ、今回のグルッペンなど、ぶっちゃけコストの問題で演奏されることはまずあり得ないようです。今回はサントリーが相当負担することで実現したそうです。
2009/09/05 妖
初コメです
初めて聞きましたね。そういう形態は・・
ともあれ、百聞は一見にしかず(一聴でしょうけど・・) 聴いてみないとわからないでしょうね。是非体験してみたいものです。
2009/09/05 ひろっち